腰痛の経絡治療について、お伝えしていきます。
腰痛の原因となっている経絡を診断するために、
腰部のツボの硬結圧痛反応を診ていく方法があります。
腰痛に対する圧痛検査では、
筋筋膜性腰痛の場合は、L1,L2高位の脊柱起立筋に圧痛反応を認めることが多く、
ツボでいうと、三焦兪や腎兪のあたりの反応となります。
また、椎間関節性腰痛であれば、
L4,L5高位の下部腰椎部に圧痛が検出されるケースが多く、
ツボでいえば、大腸兪や関元兪あたりとなります。
腰痛がなくても、これらの部位は、
圧されると痛くて気持ちが良い感じがあったり、慢性的にコリ感があったりもしますので、
病態の把握としては重要ですが、経絡的診断としては不十分です。
経絡治療での硬結圧痛反応を診ていく場合は、
拇指圧(肘圧)や拇指揉捏による診断按摩を行い、
著明な圧痛反応や、
腹部や下肢などに経絡反応として響きが起こるようなツボを検出することが大切となります。
中医学的治療では、中焦の弱りも重要視しますが、
今回は、シンプルに腰部のツボの硬結圧痛反応で考察していきたいと思います。
三焦兪
腰椎1番/2番の棘突起間から外方1寸5分
このツボに反応を診ることがあれば、三焦経の弱りが考えられます。
三焦の働きとは、諸説ありますが、
津液の流れの滞りや、現代医学で言えば、浅層部の血液循環やリンパ流の停滞、筋膜系の症状、
また、位置的に副腎の弱りなどが考えられます。
強いストレスやオーバーワーク、アレルギー体質の方などでは、副腎の弱りが起こり、
三焦兪に硬結圧痛反応があらわれることがあります。
同名経の胆経や、その表裏経となる肝経とも結びつきが強いため、
肝・胆経の治療も大切です。
腎兪
腰椎2番/3番の棘突起間から外方1寸5分
このツボの反応は、腎経の弱りをあらわします。
腎臓という臓器も含めた経絡的な腎の弱りとなりますので、
腎炎や尿管結石などの泌尿器系の疾患の既往がある方では、
腎兪に強い硬結があり、押圧によるジャンプサインが診られたり、
筋肉に防御反応を起こすこともあります。
若い方や中高年の方でも、飲食の不摂生や睡眠不足などから、湿熱が下焦に溜まってしまうと
腎の弱りから起こる腰痛が発症します。
また、高齢者の治療では腰痛に限らず、腎経へのアプローチは重要となってきます。
腎精の生命曲線といって、加齢とともに腎の働きが衰えてくるため、
腎陰虚証への治療が大切となります。
腎陰を補うツボの代表である、復溜や交信、照海などの反応を診て、治療穴とすると良いと思います。
気海兪
腰椎3番/4番の棘突起間から外方1寸5分
奇穴となりますが、このツボの反応も診ていきます。
気の海と書くように、
気の流れや働きが十分でないと、硬結反応を示すと思いますが、
イメージとしては、腎の働きに近いように思えます。
下腹部に、気海というツボがありますが、
この部位は「気海丹田」という言葉もあるように、
気が溜まっている場所、身体の中心(重心)、生命力の源というような印象があります。
疲労が蓄積している人や、病中や病後で体が弱っている人などでは、重要なツボとなってきます。
大腸兪
腰椎4番/5番の棘突起間から外方1寸5分
その名の通り、大腸経の弱りをあらわします。
便秘体質の人や下腹部痛などが起こりやすい人は、大腸兪に硬結が形成されやすいです。
また、花粉症などによる鼻水や慢性鼻炎、呼吸器系の症状などで肺経の弱りがある人も、陰陽関係から大腸経にも反応が現れやすいと言えます。
大腸経と同名経である胃経の弱りが根本にあっても、大腸兪に硬結圧痛反応は多くあらわれるため、
大腸兪に圧痛反応がある場合は、下腿胃経の足三里や、上巨虚などを治療穴として選択すると、
治療効果が高まります。
関元兪
腰椎5番/仙骨1番の棘突起間から外方1寸5分
下腹部にある「関元」というツボとも関連があり、
元気の関所と書くように、気海兪と似ていて、
体が弱っている時に、反応があらわれやすいと思います。
下腹部の関元は、小腸経の募穴となりますので、
関元兪は、小腸経の弱りもあらわれると考えますが、
この場合の小腸とは、
消化器系の働きの小腸というよりも、
心経との表裏関係から、心の補佐をする働き、また、腸管造血説での小腸の働きを、
イメージさせられます。
関元兪は、上半身と下半身をつなぐ位置に存在するため、
腰痛に伴う下肢症状があれば、必須の治療穴となります。
まとめ
腰部のツボに診断按摩を行い、一番の硬結圧痛反応を調べることにより、
腰痛の原因となっている経絡が診断出来ます。
弱りのある経絡がわかれば、
その経絡の治療と、表裏経や同名経へのアプローチも行うことによって、
腰痛に対して、全身から治療が行えるため、効果が高まります。
その他、
肓門や志室などの膀胱経2行線のツボや、
小腸兪や膀胱兪、仙骨部の八髎穴の圧痛反応も大切ですので、
またの機会に取り上げていきたいと思います。
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