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最長筋トリガーポイント|腰痛・殿部痛への関連痛と指圧のポイント
腰痛や背部痛、殿部痛の患者さんを施術するとき、痛む場所だけを押していませんか?
臨床では、患者さんが「ここが痛い」と示す場所と、実際に強い筋硬結や圧痛反応がある場所が一致しないことがあります。
その代表的な筋肉の一つが、脊柱起立筋を構成する最長筋です。
最長筋に形成されたトリガーポイントでは、局所だけでなく、少し離れた下方へ関連痛が現れることがあります。
今回は、腰背部痛や殿部痛を診るうえで知っておきたい、最長筋トリガーポイントの特徴、触診、指圧のポイントについてお話しします。
最長筋は脊柱起立筋を構成する重要な筋肉
脊柱起立筋は、主に
- 腸肋筋
- 最長筋
- 棘筋
から構成されています。
最長筋は脊柱の両側を縦に走り、体幹の伸展や側屈、姿勢保持などに関与します。
立ち仕事、デスクワーク、前かがみ姿勢、物を持ち上げる動作など、日常生活のさまざまな場面で働いています。
そのため、腰背部の筋緊張を診るうえで、最長筋は非常に重要な筋肉です。
痛む場所と原因となる場所が一致しないことがある
腰痛の患者さんは、
「この辺りが痛い」
と、自分で痛む場所を示してくれることがあります。
もちろん、その部位を確認することは重要です。
しかし、痛む場所だけを押していても、「気持ちは良いけれど、いつもの痛みとは少し違う」ということがあります。
そこで私は、痛む場所より少し上方まで広く触診するようにしています。
最長筋トリガーポイントは下方へ関連痛を送ることがある
最長筋のトリガーポイントでは、形成部位より下方へ関連痛が現れるパターンが知られています。
教科書的には、数cmほど下方へ関連痛が現れる例があります。
臨床でも、患者さんが痛いと訴える場所より、2〜5cmほど上方に強い筋硬結や圧痛反応がみられることがあります。
そのため、痛む場所そのものだけでなく、その少し上方を丁寧に触診することが重要です。
「そこです」と感じる場所を探す
たとえば、患者さんが下部腰椎付近に痛みを感じていても、触診していくと、その少し上方の最長筋に強い硬結が見つかることがあります。
そこへ圧を加えると、
「そこです」
「いつもの痛みが響きます」
と反応されることがあります。
こうした反応は、施術ポイントを考えるうえで一つの手がかりになります。
ただし、必ず関連痛を再現しなければならないわけではありません。
筋硬結・圧痛・響き・症状の変化を総合して判断することが大切です。
殿部痛でも腰だけを見るとは限らない
殿部に痛みを訴える患者さんでは、殿筋群や梨状筋、小殿筋などを確認することが多いと思います。
しかし、それだけではありません。
臨床では、胸腰移行部や上部腰椎付近の最長筋を圧したときに、殿部へ響きを感じる方もいます。
このような場合、患者さんが痛みを感じている殿部だけを緩めても、十分に変化しないことがあります。
症状がある場所と、その症状に関与している場所は必ずしも同じではないということです。
関連痛は距離だけで決めない
「最長筋は5cm下方へ関連痛を送る」と覚えてしまうと、それだけを基準に探してしまいがちです。
しかし、実際の身体は教科書通りではありません。
形成されている部位や患者さんの身体の状態によって、関連痛の範囲や方向には違いがあります。
そのため、
- 痛む場所の少し上方
- 胸腰移行部
- 左右差
- 筋腹の硬さ
- 圧痛
- 患者さんが感じる響き
を広く確認していきます。
最長筋は広く触れてから絞り込む
トリガーポイントを探すときは、最初から一点だけを狙わないほうがよいと考えています。
まずは最長筋を広く触れ、筋全体の緊張や左右差を確認します。
その中で、
- 明らかに硬い場所
- 圧痛が強い場所
- 周囲と質感が違う場所
- 症状と一致する響きがある場所
を絞り込んでいきます。
点を探す前に、筋全体を見る。
これはトリガーポイント療法だけでなく、指圧の触診でも大切です。
最長筋への指圧は圧の方向が重要
最長筋は背骨の両側を縦に走っています。
ただ床方向へ強く押すだけでは、筋肉を十分に捉えられない場合があります。
身体の形状、筋腹の位置、その奥にある骨格をイメージしながら、圧が逃げない方向を探します。
私は、筋肉の中心を捉え、その奥の構造へ圧を伝えるように意識しています。
強さよりも方向が合っていることが大切です。
安定持続圧で深部まで圧を届ける
最長筋のような厚みのある筋肉では、圧を入れてすぐ抜くよりも、適切な位置で安定持続圧を行うことで、深部まで圧が伝わりやすくなります。
ここでも、力任せに押し込む必要はありません。
垂直圧を保ちながら、一定時間圧を安定させます。
すると、表面から深部へ少しずつ圧が浸透していきます。
「深く押す」のではなく、「圧が深く入っていくのを待つ」という感覚です。
母指だけで押さない
腰背部は大きな筋肉が多いため、深く押そうとすると母指や腕の力を使いやすくなります。
しかし、母指だけで押し続けると、施術者自身の手や肩への負担が大きくなります。
最長筋への指圧でも、身体全体を使います。
丹田から重心を移動し、股関節、体幹、上肢を連動させ、その力を手指へ伝えます。
母指は、全身から伝わってきた力を患者さんへ届ける接点です。
腰痛は最長筋だけで考えない
もちろん、腰痛の原因がすべて最長筋にあるわけではありません。
腰痛では、
- 多裂筋
- 腰方形筋
- 腸腰筋
- 殿筋群
- ハムストリングス
- 股関節
- 腰椎
- 骨盤・仙腸関節
なども確認します。
特に仙腸関節周囲の機能異常では、腰部・殿部・大腿部などへ関連痛が現れることがあります。
また、仙腸関節周囲の機能変化によって姿勢や荷重、周囲の筋緊張が変化し、その結果として脊柱起立筋へ負担がかかっている可能性も考えられます。
私は、最長筋のトリガーポイントを診る場合でも、腰椎・股関節・骨盤・仙腸関節を含めた身体全体のつながりを見ることを大切にしています。
局所と全体を行き来しながら診る
最長筋に明確な筋硬結があれば、そこを丁寧に施術します。
しかし同時に、
なぜその場所が緊張しているのか。
姿勢はどうか。
股関節の動きはどうか。
骨盤の動きはどうか。
左右の荷重はどうか。
ということも考えます。
局所を細かく診ることと、身体全体を見ること。
この両方が、臨床では重要です。
トリガーポイントの場所を覚えるだけでは足りない
「最長筋のトリガーポイントはここ」と暗記するだけでは、臨床では十分ではありません。
実際には、
- 筋肉を正確に触診できるか
- 筋硬結を捉えられるか
- 適切な方向へ圧を入れられるか
- 安定持続圧を保てるか
- 関連痛や響きを評価できるか
- 身体全体とのつながりを考えられるか
という技術が必要です。
知識を手の感覚へ変えることで、はじめて臨床で使える技術になります。
まとめ|痛む場所より上方まで丁寧に触診する
最長筋のトリガーポイントでは、形成部位より下方へ関連痛が現れることがあります。
そのため、腰背部痛や殿部痛の施術では、痛む場所だけにとらわれず、少し上方まで広く触診することが大切です。
- 痛む場所だけを押さない
- 上方まで広く触診する
- 最長筋全体の硬さを確認する
- 筋硬結・圧痛・響きを総合して判断する
- 圧の方向を合わせる
- 安定持続圧で深部へ圧を届ける
- 腰椎・股関節・骨盤・仙腸関節まで広く見る
患者さんが痛みを感じている場所と、症状に関与している場所は、必ずしも同じとは限りません。
「痛む場所を押す」から、「症状につながっている場所を探す」へ。
この視点を持つことで、腰背部痛や殿部痛への施術の幅はさらに広がっていくと考えています。
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